システム開発コラム集
Aceessでのシステム開発に関するコラム集です。
183.Accessで作るシステム開発の保守・運用で失敗しないポイント
Accessは迅速に業務システムを構築できるツールとして、多くの企業で利用されています。
しかし運用段階に入ると、
-
「更新ができない」
-
「誰も中身がわからない」
-
「エラーが出たけど対応できない」
といったトラブルが発生しがちです。
これらの多くは、開発段階で保守・運用を想定していないことが原因です。
**Accessシステムを安定的に運用するために必要な「5つのポイント」**を紹介します。
どれも難しい技術ではなく、ちょっとした配慮と仕組みづくりで実践できます。
1. 属人化を防ぐ設計とドキュメント作成
Accessは1人で完結できるため、担当者の頭の中だけで開発が進みやすいツールです。
その結果、担当者の退職や異動後に誰も保守できない状態になるケースが多発しています。
対応策:
-
VBAやクエリにはコメントをこまめに記述
-
フォーム・テーブル等に命名ルールを導入(例:frm_顧客入力)
-
設計書、仕様書、業務フロー図を作成して共有
-
使用中のAccessバージョンや依存ライブラリも記録
➡ 簡単な資料でも「見ればわかる」状態をつくることで、保守性が格段に上がります。
2. フロントエンドとバックエンドの分離
Accessシステムでよくあるのが、1つのファイルにデータとロジックが詰め込まれている構成。
この場合、他の人がファイルを開けない・壊れるといった問題が頻発します。
対応策:
-
データ(テーブル)部分はバックエンド(.accdb)に分離
-
UIとロジックはフロントエンドで管理し、各ユーザーに配布
-
バックエンドは共有フォルダやサーバー上に置く
➡ FE/BE構成(フロントエンド/バックエンド分離)にするだけで、保守性と安定性が大幅に向上します。
3. バージョン管理と配布フローの整備
AccessにはGitのような高度なバージョン管理機能はありませんが、工夫次第で十分対応可能です。
対応策:
-
フロントエンドのファイル名に日付やバージョン番号を付加(例:client_v20250725.accdb)
-
最新版は共有フォルダで配布
-
リリースノートや修正点を簡単に共有
-
定期的なバックアップと、変更履歴の記録
➡ いざという時に「元に戻せる安心感」を持つことができます。
4. ログ管理でトラブルに備える
Accessでは「エラーが出たけど原因がわからない」ことがよくあります。
ログがなければ、保守対応はほぼ不可能です。
対応策:
-
VBAにエラーハンドリング処理を組み込み、ログファイルへ出力
-
ユーザー操作の履歴(追加・削除・更新)をログテーブルに記録
-
ログを定期的に確認し、異常の早期発見につなげる
➡ 「痕跡がある」ことが、保守を圧倒的に楽にします。
5. ユーザー教育と運用ルールの明確化
Accessは直感的で操作がしやすい反面、ユーザーの誤操作がトラブルにつながりやすいです。
対応策:
-
スクリーンショット付き操作マニュアルを用意
-
導入時に簡単な操作トレーニングを実施
-
ファイルの直接編集や複製を禁止する運用ルールを設定
➡ ユーザー側の理解とルール遵守が、保守性を大きく左右します。
Accessは始めやすく、柔軟な開発が可能なツールです。
ただし、保守・運用フェーズで困らないためには「最初の設計」がすべて。
-
誰が見てもわかるドキュメント
-
分離された構成と配布ルール
-
ログやバージョンの整備
-
ユーザーへの周知
こうした小さな配慮が、長く安定して使われるAccessシステムの土台になります。