システム開発コラム集
Aceessでのシステム開発に関するコラム集です。
185.Access開発プロジェクトの成功率を上げるコミュニケーション術
Accessを使ったシステム開発は、Excelベースの業務からの脱却や、業務効率化を目的として多くの現場で導入されています。スモールスタートができる反面、「担当者の独走」「仕様の食い違い」「利用者との温度差」など、コミュニケーション不足によってプロジェクトが頓挫するケースも少なくありません。
どれほど優れたAccessシステムを開発しても、関係者との意思疎通が取れていなければ、使われない・保守できないという結果を招きます。ここでは、Access開発の成功率を高めるためのコミュニケーション術について紹介します。
1. 開発前に“なぜ作るのか”を関係者全員で共有する
Accessでのシステム開発では「現場の課題をスピーディーに解決する」ことが重視されがちですが、その前に明確にしておくべきなのが“目的”です。「今の作業のどこが不便なのか」「新しいシステムで何が変わるのか」を開発者・ユーザー・管理職の間で擦り合わせましょう。
特に現場のキーパーソンとなる担当者(業務責任者など)に納得してもらうことが、のちの導入・定着フェーズをスムーズにします。開発者視点で機能を増やしすぎず、「最小限でまず動かす」方向性も重要です。
2. 説明は“言葉”より“見える形”で
AccessはGUI(フォームやレポート)が簡単に作れるため、言葉だけで伝えるよりも、プロトタイプを使った“見える化”が効果的です。特に非エンジニアにとっては、仕様書より実際の画面が理解しやすいケースが多いです。
- 試作品を定期的に見せてフィードバックをもらう
- クエリの出力例や帳票サンプルを見せながら要件を確認する
- 「このボタンを押すとこう動きます」と実演する
こうしたコミュニケーションを通じて、仕様のブレや「そんなつもりじゃなかった」を防ぐことができます。
3. 小さな変更でも共有・記録を徹底する
Accessシステムは柔軟であるがゆえに、ついその場の判断で機能を追加・変更しがちです。しかし、それがチームや利用者に伝わっていないと、混乱や信頼の低下につながります。
- フォームや処理に手を加えた場合は、変更点を共有メモに記録
- 更新ファイルには日付・バージョン名をつけて配布
- 口頭でのやりとりも、あとで必ずテキストでまとめる
チームや利用者との“情報の対称性”を保つことで、開発途中での齟齬を回避できます。
4. ユーザーの声を拾う“仕組み”を作る
システムを実際に使うのは現場のユーザーです。その声を拾うためには、単発のヒアリングだけでなく、継続的なフィードバックの機会を仕組みとして設けましょう。
- 問い合わせや要望を書き込めるフォームを設置
- 定期的なミニミーティング(10〜15分)で現場の声を確認
- 「これは改善します」「ここは仕様です」とリアクションを返す
ユーザーが「このシステムはちゃんと見てもらえている」と感じることで、活用意欲や協力体制が育ちます。
5. トラブル時は“責めるより振り返る”
Accessシステムでもバグやエラーは起きます。そんな時、ユーザーや関係者を責める姿勢ではなく、「なぜ起きたのか、次にどう防ぐか」を冷静に振り返るコミュニケーションが求められます。
- エラー報告時に感情的にならず、状況を聞き出す
- 再発防止策を共有し、協力への感謝を伝える
- 不具合対応後は簡単な報告書やメモを残す
こうした積み重ねが、プロジェクトの信頼関係を築いていきます。
Access開発は「小さく始めて大きな成果を生む」ことが可能な手法ですが、その鍵は人と人のコミュニケーションにあります。ユーザー、開発者、関係者が同じ方向を向いて取り組める環境を整えることで、プロジェクトの成功率は格段に高まるのです。